本を読む1.『裁く眼』我孫子武丸著

 法廷画家を主人公にしたミステリー!

 類い希な画力と観察力が謎を解くわけですよ、奥さん。旦那さんの酒の友に、お子様のおやつに、お一ついかがでしょうか。

 我孫子さんの著書はどれほど奇想に満ちていようと(カンガルー!!)グロテスクなものを描こうと(何しろ代表作があのサイコミステリーですから)、端正です。きっと我孫子さんの頭の中は非常に綺麗に整理されているのだろうなと思います。普通そんな事をすると、頭の中の「その他」の欄がたちまちいっぱいになるものですが、もしかしたら我孫子さんは「その他」がないのではないかと思うぐらいきちんと整理できるような世界を見ているのではないかと思ったりもします。

 この端正さは、かなりの長期にわたって計画し取材を重ね資料を集め読み込んでいるこの長編小説を、あっという間にするすると読み終わらせてしまいます。何と楽しい読書の時間かと私は思い、この端正さに憧れます。 

 私はミステリー音痴なので、トリックというものの楽しさが今ひとつわかっていませんが、張られた伏線が回収されていく楽しさや、謎が解明されていく気持ちよさはわかるので、面白いぐらい作者の思い通りにハラハラドキドキしながら読み終わりました。

 おかげで子供の書くようなこんな感想しか書けません。

 小説はこのように書くべきよなあ、と思いつつそんなものが書けた試しはありません。今更それを悔しがりはしませんが、運動会で俊足の同級生をぼんやり眺めていたときのような、あの子が走っているときはきっと私とは違う世界を見ているのだろうなあというあこがれと諦めがないまぜになったような気分にはなります。

 このスピードで読んじゃえるので、それに見合ったスピードでどんどん作品を書いていただければ嬉しいです。

 と、最後の最後まで小学生の感想文でした。

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